侵食高潮対策工法の紹介
侵食が進む海岸線の砂浜の減少や海岸背後の越波被害を防ぐために、海岸保全対策(高潮対策)を行っています。清水海岸では、L型突堤・消波堤・離岸堤型ヘッドランド・離岸堤・根固工などの海岸保全施設の整備が完了し、現在では海岸線に砂を補給して砂浜の維持・回復を図る養浜工を継続的に実施しています
養浜(サンドバイパス・サンドリサイクル)
清水海岸の砂浜は安倍川からの供給される土砂(漂砂)により形成されており、この一連の土砂の流れ(流砂系)に配慮し、対策を行っていくことを基本としています。自然に砂浜が回復するまでの間、主に砂の流れを人為的に補う養浜により砂浜の維持・回復を図っています。
養浜の実施に当っては、良質な養浜材を継続的に確保することが重要ですが、清水海岸の養浜は、①土砂供給源である一級河川安倍川の河床土砂を養浜材として使用する『サンドバイパス』、②清水海岸にたどり着いた土砂が漂砂下手の海底谷に落ち込む前に再利用する『サンドリサイクル』を実施することで、安定した供給を可能としています。
<サンドバイパス>
海岸侵食の発生に伴って大規模な砂利採集を禁止して以降、安倍川の中下流部では河床が上昇しています。治水安全度が低下しないよう、安倍川を管理する国土交通省と連携し、河床が上昇している箇所の採掘を行い、その土砂を海岸に運搬し、養浜材として利用しています。
<サンドリサイクル>
安倍川から清水海岸にたどりついた砂は、三保半島の先端の海底谷に落ちていきますが、その一部は三保飛行場がある吹合の岬に堆積し続けています。このため、この堆積する砂を漂砂の流れの上手側の海岸に運搬し、養浜材として再利用しています。
※上手側とは?
海岸線に立った時に、砂の供給元である安倍川側のことを上手側と言っています。
養浜のサイクル
サンドバイパス、サンドリサイクルを実施し、浜に砂を盛っておくことで、波から堤防を守るとともに、波の力を利用して砂浜がやせやすい場所に砂を流して補充します。
このとき、「浜がけ」と呼ばれる、砂浜が波で削られてできた崖のような形状ができます。これは動的養浜が機能している証拠です。「浜がけ」は、波の影響で不安定な状態にあり、崩れ落ちる恐れがあります。落差が大きく転落すると危険ですので、「浜がけ」には近づかないようにしてください。
L型突堤
沖合いに突き出した突堤により、汀線に沿って漂う砂の移動を制御・捕捉し、砂浜の安定化を図ります
羽衣の松東側の海岸線から沖合いに突き出したL字型の突堤は下手の海底谷に落ち込む土砂を事前に捕捉し、堆砂させる効果を発揮しています。
消波堤
消波ブロックを海岸線に平行に設置し、押し寄せる波の力を弱めて砂の流出を食い止め、海岸線の後退を防ぎます。
三保松原前面では、海岸線に設置した消波堤と継続的な養浜の実施により、現況の海岸線の維持を図っています。
離岸堤型ヘッドランド・離岸堤
通常のヘッドランドにある縦堤をなくし、下手への漂砂の供給を完全に遮らない離岸堤2基を1セットとしたヘッドランド工法を採用し、併せて養浜を実施することで砂浜を安定して維持していきます
駒越~三保地区では、離岸堤型ヘッドランド工法の活用により、コンクリートブロックの使用量を少なくする一方、砂浜をより大きく残すことができるようになりました。
根固工
ヘッドランド下手の砂浜些少部に根固工を設置することにより、護岸倒壊防止を図ります
養浜実施箇所前面に根固工を設置することで、常時波浪による養浜材の流出を抑制しています。養浜地形を安定化させることで、高波時の背後地への越波被害防止に効果を発揮しています。
モニタリング
防護と景観の両立に着目したモニタリングを、継続して実施する必要があります。短期対策におけるL型突堤の配置や構造、養浜量及び養浜位置等を、対策の効果が発揮され、対策 による悪影響が及ばないよう順応的に見直しを図っています。